美幌町で小学生36人が命や自然の大事さ学んだ「北海道わたみ自然学校」

2019.08.20 自然

自然との触れ合いを通じて、命や夢の大切さを学ぶ「北海道わたみ自然学校in美幌町」が8月5日~8日の4日間にわたり開かれ、命や自然、友達、生活習慣、夢の5つのテーマに沿って、牧場見学やカヌー体験など多彩なプログラムが行われた。小学4~6年生の36人が参加し、ワタミグループの社員6人が先生として引率。今年は初めて美幌町に訪れた。

両親から遠く離れ、北海道美幌町に到着した

両親から遠く離れ、北海道美幌町に到着した

美幌町は北海道の東部に位置し、農林業の盛んな自然豊かな町だ。地名はアイヌ語の「ピ・ポロ=水多く・大いなる所」に由来しているとされ、美幌川をはじめ大小合わせて60本を数える美しい川が流れている。

■SDGsの目標も体感

1日目、空港に集まった子どもたちは飛行機が初体験の子も多く、初めて会う友達との生活に少し緊張ぎみの子も。しかし離陸の瞬間には「ワー」と歓声が上がり賑やかな4日間の旅が始まった。

無事北海道に到着し、お昼ごはんにはお父さんとお母さんからの手紙が添えられたお弁当を食べた。普段両親からの手紙を読む機会は少ない子どもたち。少しはにかみながら、嬉しそうに手紙を読んでいた。

宿についてから、ロールパン作りを体験。「生地を丸めるのが難しい」「でも楽しかった」。北海道でのパン作り体験は、子どもたちの印象に強く残ったようだ。

「生地をまるめるのが難しかった」ロールパン作り

「生地をまるめるのが難しかった」ロールパン作り

その後、夢について、また世界の飢餓の現状や命をいただく食べものへの感謝を学んだあと、夕食にはジンギスカンを堪能した。羊の肉を初めて食べる子や、お肉を「おかわり」する子も。全員で残さずに完食し、食品ロスゼロを達成した。

ジンギスカンは子どもたちに大人気。残さずに食べ、食品ロスゼロを達成した

ジンギスカンは子どもたちに大人気。残さずに食べ、食品ロスゼロを達成した

今年の自然学校では、国連が定めるSDGs(持続可能な開発目標)についても学びを深めたのが特徴の一つだ。同行したSDGs推進本部本部長の百瀬則子は、17の目標について1日5分ずつ子どもたちにレクチャーした。

「言葉だけでなく、自然のなかでSDGsの目標を体感する機会でもある。この経験のいくつかが、10年後の子どもたちの心のなかに残っていてくれたら」と百瀬は話す。

■確率20%の雲海に挑戦

美幌峠から屈斜路湖に浮かぶ雲海を望む。絶景に息をのんだ

美幌峠から屈斜路湖に浮かぶ雲海を望む。絶景に息をのんだ

2日目は朝の4時に起きて、美幌峠から眺める雲海を見に行った。微妙な天候の変化のため、見られる可能性は20%といわれ大きな賭けだったが、見事な雲海を見ることができた。「屈斜路湖(くっしゃろこ)に雲が輝いていた」と子どもたちも大満足。

その後ワタミファーム美幌峠牧場を見学し、牛に草をあげたり、子牛にミルクをあげたりした。牛を放牧して健康的に長く育てていることも学んだ。「草を食べてミルクをつくってくれる牛はすごいと感じた」と感想を話す子どももいた。オスの牛は、ある程度育てた後に食肉として出荷されることも教わった。

ワタミファーム美幌峠牧場では、子牛へミルクをあげた。この子牛も、成長したら食肉として出荷されるのだろうか

ワタミファーム美幌峠牧場では、子牛へミルクをあげた。この子牛も、成長したら食肉として出荷されるのだろうか

お昼ごはんを食べて少しお昼寝した後、午後には屈斜路湖でカヌー体験。「初めてカヌーに乗った」「競争で1位になり、一番楽しかった」という子も。湖の中の生きもの観察を、興奮しながら楽しんでいた。

屈斜路湖では、カヌー競争や生きもの観察を行った

屈斜路湖では、カヌー競争や生きもの観察を行った

夜にはバーベキュでトウモロコシやお魚など素材の味をたっぷり味わった。その後キャンプファイヤーには「夢の神様」が登場し、子どもたちに夢を描くことの大事さを語り掛けた。真剣な顔で聞く子どもたち。この日は夜寝る前に、それぞれの夢について作文を書いた。

夜のキャンプファイヤーには、「夢の神様」も登場した

夜のキャンプファイヤーには、「夢の神様」も登場した

■ザリガニとりで生態系の大切さ実感

3日目の午前中は川遊び。鶯沢川でザリガニやイワナを捕まえた。ヤマメやウナギなどもいた。外来種のザリガニが増えすぎたことで、在来種である日本のザリガニの数が減ってしまっている生態系の問題を学んだ子どもたちは、外来種のザリガニをたくさん捕まえた。

ザリガニとりを通して、生態系を学んだ子どもたち

ザリガニとりを通して、生態系を学んだ子どもたち

「外来種のザリガニは、小さな赤ちゃんも駆除しないといけない。かわいそうだけど、その原因をつくったのは私たちヒト」と感想を話す子もいた。

お昼を食べた後は、野菜の収穫。玉ねぎやじゃがいも、人参、アスパラガスなどをとり、その野菜を使って夕食のカレーをつくった。自分で収穫した野菜で作ったカレーの味は、格別だったようだ。

自分たちで収穫した人参や玉ねぎ、じゃがいもでカレーをつくった

自分たちで収穫した人参や玉ねぎ、じゃがいもでカレーをつくった

夜には、2日目に書いたそれぞれの将来の夢についての作文を、みんなの前で発表し合った。それぞれの思いの込められた個性あふれる夢を発表する姿に大人たちの心も揺さぶられた。子どもたちは「夢の大切さを学んだ」と力強く語った。

最後の夜には、町役場の職員の方が差し入れてくれたスイカを食べ、星や天体観察の話を聞いてぐっすり眠った。

■4日間の体験と学びを発表

両親やスタッフが大勢見る前で、感じたことを自分のことばで報告した

両親やスタッフが大勢見る前で、感じたことを自分のことばで報告した

最終日は、4日間の旅の出来事や感じたこと、考えたことを、イラストを交えて班ごとに模造紙などにまとめた。飛行機で東京に到着し、両親をはじめ駆けつけた大勢の保護者やスタッフを前に堂々と発表した。一回り大きくなった子どもたちの姿に、目を細める人もいた。

小出浩平・自然学校教頭(ワタミファーム&エナジー㈱社長)は、「美幌町での初めての自然学校の開催に向けて、昨年秋から現地を往復して調整を続けてきた」という。

小出教頭とともに現地を下見し、企画・運営全体の取りまとめを行った人材開発本部教育部高城睦弘は、「生態系の保全に向けた熱心な取り組みや、障がい者雇用に力を入れたパン作りなど、現地で活動を続けている人たちの思いや、背景にあるストーリーを大切にしてプログラムの調整を進めた」と話した。

今回スタッフとして参加した自然学校の卒業生もいる。現在大学に通う佐塚真紀さんは、スタッフとして6~7回目の参加。「同世代の全く知らない子たちと仲良くなれ、夢の大切さを感じられるのは得難い経験。またスタッフとして参加することで、引率する先生が真剣に一人ひとりの子と向き合っていることを強く感じた」と話した。

高校生の藤本翔太さんは、今回スタッフとしては初の参加だ。自然学校について、「自分以外の人や物事のために動くことが自分に返ってくると感じる。自身を見つめ直す機会にもなっていると思う」と述べた。


社会との関わりや、人や社会、地球を元気にする取り組みなどを紹介します。