農業リハビリで高齢者の所得倍増へ――「みんなの夢AWARD in 陸前高田」

2018.03.27 社会

陸前高田の氷上太鼓で始まった「みんなの夢AWARD in 陸前高田」

陸前高田の氷上太鼓で始まった「みんなの夢AWARD in 陸前高田」

ワタミ株式会社が特別協賛するソーシャルビジネスプランコンテスト「みんなの夢AWARD」の初となる地方版が3月17日、岩手県陸前高田市で開かれた。「復興支援から復興ビジネスへ」をコンセプトに掲げ、7人のファイナリストがビジネスプランをプレゼンした。グランプリには、農業を通したリハビリで高齢者の所得向上計画を提案した富山泰庸さんが輝いた。

グランプリを受賞した富山さんは調剤薬局の運営などを行うロッツ株式会社(岩手県大船渡市)を、2011年8月に起業。高齢者に農業を通したリハビリを行い、所得倍増を狙ったプランを発表した。

日本全国に展開できるビジネスモデルをつくり、「復興請負人」になりたいと力を込めた。富山さんには、最大500万円の出資交渉権が贈られた。

富山さんは「一番うれしかったのは、会場に来ていた160人の高校生たちが全員『いいね!』のプラカードを挙げてくれたことです」と喜びを語った。

「みんなの夢AWARD in 陸前高田」でグランプリに輝いた富山泰庸さん

「みんなの夢AWARD in 陸前高田」でグランプリに輝いた富山泰庸さん

「高齢者には理解していただけると思っていましたが、子どもたちにもサポートしてもらえたことはとても大きかったです。これからの陸前高田は高齢者が元気で、かつ、子どもたちが超高齢化を理解した上でどう活躍するかがカギになります。このアワードを機に、市民の皆様と交流して、一緒にまちづくりをしていきたいと思います」(富山さん)

「みんなの夢AWARD in 陸前高田」は、ワタミ創業者の渡邉美樹氏が立ち上げた公益財団法人みんなの夢をかなえる会と陸前高田市の共同プロジェクト。渡邉氏が陸前高田市の参与を務めている縁から、同市での開催を決めた。

AWARD開催に先駆けて昨年10月から、ソーシャルビジネスに関するセミナー「ソーシャルマネジメントカレッジ」を陸前高田市で展開。渡邉氏が「企業のミッション、ビジョン、戦略のつくり方」について講演したり、みんなの夢をかなえる会の中川直洋専務理事が地域ならでの強みを生かした事業戦略の立て方などについて教えたりしてきた。

■地域資源を生かした7人の夢

今回のファイナリストは、このセミナー参加者から選ばれた。それぞれが陸前高田市の地域資源を生かした「夢」を描き、具体的なビジネスプランに落とし込んだ。

準グランプリには、NPO法人りくカフェ理事の及川恵里子さん(高田町)が選ばれた。及川さんは、健康活動を広げて「市民健康応援団」になりたいとアピール。減塩・低カロリーランチの開発などが評価された。

米崎町大和田牡蠣養殖代表の大和田信行さんは、牡蠣養殖の近代化とイタボ牡蠣の養殖を実現させ、牡蠣養殖の革命家になりたいと訴えた。

乾燥フルーツComeCome代表の新沼真弓さん(竹駒町)は、地域資源を通じて、震災の教訓を伝え、三方よし社会をつくるプランを発表。合同会社ぶらり気仙代表の鍛冶川直広さん(小友町)は、広田湾の海産物の価値を高める「地域活性ビジネス」を考案した。

村上製材所専務の村上英将さん(矢作町)は、木材需要をつくり、次世代に託せる山づくりを掲げた。企画制作代表の昆野玲さん(東京)は、壁や困難を乗り越えて、人が集まるコミュニティーをつくり、「企画実現プロデューサー」になりたいと強調した。

岩手県陸前高田市の戸羽太市長も登壇した

岩手県陸前高田市の戸羽太市長も登壇した

各ファイナリストのプレゼンが終わるごとに、その取り組みに共感した協賛企業がプラカードを挙げ、一般観覧者は「いいね!」と書かれたカードを掲げた。会場は一体となり、ファイナリストたちの夢を応援した。

及川さんとグランプリの富山さんは副賞として、同市が中心市街地に建設を計画している「チャレンジショップ」を利用できる権利も獲得した。2019年は、みんなの夢AWARDの地方版を10カ所以上で開催する予定だ。


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