お笑いジャーナリストのたかまつななさん、「みんなの夢AWARD13」グランプリに

2023.03.17 社会

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SDGsに貢献するビジネスプランコンテスト「みんなの夢AWARD13」が3月14日に開催され、ファイナリスト7人が社会課題を解決する事業のプレゼンテーションを行った。グランプリには、「『社会を変えられる』と思える子どもたちを増やしたい」と力強く訴えたお笑いジャーナリストのたかまつななさんが輝いた。準グランプリには、キャンプを通じて農業の活性化を目指す山崎繁幸さんが選ばれた。

「みんなの夢AWARD」は2010年から、公益財団法人みんなの夢をかなえる会が主催している。社会課題をビジネスで解決する社会起業家の発掘・育成・支援が目的だ。「共感性・社会性」「事業性」「プレゼンテーション」の3点を審査基準にしている。

グランプリには最大2000万円の出資交渉権と賞金100万円、準グランプリには賞金50万円が贈られる。すべてのファイナリストは、希望する協賛企業からの支援も受けられる。

審査委員は、渡邉美樹・みんなの夢をかなえる会代表理事(ワタミ代表取締役会⻑兼社⻑)、澤上篤人氏(さわかみ投信創業者)、藤野英人氏(レオス・キャピタルワークス代表取締役会長兼社長・最高投資責任者)が務めた。

■「社会を変えられる」と思える子どもを増やす

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「『社会を変えられる』と思える子どもたちを増やしたい」。こう熱く訴えかけたのは、「みんなの夢AWARD13」グランプリに選ばれた、たかまつななさんだ。たかまつさんは、フェリス女学院出身のお嬢様芸人として、テレビ・舞台で活動する傍ら、お笑いを通して社会問題を発信してきた。

たかまつさんは教育に厳しい家庭で育ったものの、「学生時代は勉強嫌いで落ちこぼれだった」と振り返る。中学3年生のとき、英語スピーチコンテストで披露したネタが受けたことがきっかけで、お笑いの力を実感したという。

2016年に「笑下村塾」を立ち上げ、社会問題を「自分事化」して、「お笑い」で楽しく社会問題を伝える活動を続ける。日本放送協会(NHK)を経て、現在は時事ユーチューバ―、お笑いジャーナリストとして活躍する。 「『社会を変えられる』と思う日本の若者は26.9%しかいない。でも、それは社会を変える場がなかっただけ。ドイツの学校では、生徒の提案でLGBTQ向けトイレが学校に設置されたという事例もある。小さな成功体験が自信になり、行動が変わり、社会変革につながっていく」(たかまつさん)

2022年には、7月の参議院選挙に向け、お笑い芸人が先生となる出張授業「笑える!政治教育ショー」を群馬県内の61校で実施した。授業を受けた生徒の数は約1万人に上り、18歳の投票率は8%上昇したという。

「『どうせ社会は変えられない』と、あきらめてしまう日本の子どもたちは多い。みんなの一票で、社会が変わるということを本気で伝えていきたい。未来の子どもたちにツケを回さない社会を、私たちがいまつくらなければいけない」と訴えた。

■日本の農業の素晴らしさを世界へ

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「キャンプ場で地産地消の楽しさを伝え、日本の農業を盛り上げたい」。準グランプリに選ばれた山崎繁幸さんは、こう力を込めた。

山崎さんは飲食店検索サイトを運営するぐるなびに13年間勤めていたが、食材プロモーション部門に配属されたことがきっかけで、全国各地の農家とつながった。日本の農業の素晴らしさを実感し、「世界に広げたい」と考え、起業した。

山崎さんは、「空前のアウトドアブームだが、キャンプは経済効果が低い」と説明する。全国にあるキャンプ場のうち、9割が食材を販売しておらず、キャンパーは自前で食材を調達する人が多い。キャンプ場の外に出ないので、地域にお金が落ちにくい。

そこで、山崎さんは地域でコンソーシアムをつくり、キャンプ場と地元の農家をつなぐサービスを始めた。地産地消のバーベキューセットなどをキャンプ場に届ける。2023年中にアウトドアツーリズムを推進するテロワールキャンプ協会を設立する予定だ。

山崎さんは「過去に事業で失敗したこともあったが、誰にも言えず、後ろめたい気持ちもあった。『みんなの夢AWARD』をきっかけに、賞に恥じることのない成果を生み出せるように頑張っていきたい」と、喜びを語った。

■三陸産・椿茶を全国に、「復興から新興」へ

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岩手県陸前高田市で生まれ育った吉田雪希さん(バンザイ・ファクトリー取締役)は、市の花である「椿」に着目した製品づくりを行う。2011年3月11日に東日本大震災が発生し、津波で多くの樹木が倒れたが、椿だけは生き残った。樹齢1400年になる日本最古の三面椿も、そのまま残っているという。

「津波にも負けない椿の強い姿を見て、人間もこうありたいと思った。震災のときに、たくさんの人に支えてもらった。自分はどう役に立てるのだろうと考えるなかで、椿茶の事業を始めた。復興から『新興』のフェーズに変わりつつあるなか、三陸で新たなプロダクトを作り、世界に希望を届けたい」(吉田さん)

吉田さんが生産する椿茶は無農薬、ノンカフェインで、自然な甘みもある。すでに椿山荘のお土産として人気を集めているほか、自動車ディーラーや産婦人科などの呈茶としても提供されている。飲食店向けには椿茶ハイなども提案する。

吉田さんは「まずは売り上げを上げて、その利益で地域を良くしたい。流通には出荷せずに、その土地でしか手に入らないブランドとしての価値を確立していきたい」と意気込む。

■学校を「楽校」に、未来の自分から学ぶ場づくり

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「とにかく勉強しなさい。しないと幸せになれないよ」。中学一年生のレウォンさんは、そんな大人からの問いかけに疑問を持った。「将来の夢を聞かれると、職業を答えるのが一般的。でも、職業よりも、どんな大人になりたいかが大事なのではないか。このままで本当に幸せになれるのだろうか」。

レウォンさんは「AIが発展し、仕事の効率性が高まるなかで、人間には『答え』のない問題を解けるような生き抜く力が必要だ」と話す。学校での勉強のやり方に、疑問を持ったレウォンさんは、かっこ良い大人たちから楽しく学べる場として「之楽館(しらくかん)」の立ち上げを目指す。

「いいや」(言ってみる、行ってみる、やってみる)と「もちょ」(失敗ではなく「もうちょっと」)をコンセプトに掲げ、事業計画を作成中だ。

■内モンゴルの塩を販売し、砂漠緑化を防ぐ

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内モンゴルをはじめ、世界では急速に砂漠化が進んでいる。そのペースは、1分間に東京ドーム2個分の速さだ。坂本毅さんは「砂漠化は環境問題にとどまらない。砂漠化は貧困を生み、それが紛争や内戦につながる」と危機感を募らせる。

坂本さんは青年海外協力隊として、内モンゴル・オルドス市で日本語教師として働いているなかで、砂漠化の問題を目の当たりにした。当時は行動に移せなかったが、大人になった教え子と再会したことがきっかけで砂漠緑化活動を始めた。

ビジネスモデルは、内モンゴルで採れた塩を日本で販売し、その売り上げの一部を砂漠緑化に充てる。なかでも、ヒマラヤ岩塩、モンゴル天日湖塩、ブラック岩塩をブレンドした「クセのあるクセになる塩」は好評だという。塩一袋で、1本の木を植林できるが、2004年から2019年までで、東京ドーム150個分(700ヘクタール)の緑化を達成した。

「夢は、国や民族や宗教の壁を超える。緑化した土地で農業を行えるようになれば、住民の生活も向上し、高付加価値農業を実現できる。一緒にわくわくしながら夢をかなえていきましょう」と、協力を呼び掛けた。

■間伐材から和製油作り、世界に広げたい

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自然がそばにある環境で育った中学生3年生の石村美羽さんは、地域密着型の和製油事業の立ち上げを目指す。

年間800万トンの間伐材が発生しているが、8割は未活用で、「林業のお荷物になってしまっている」と説明する。石村さんは、スギ、ヒノキ、カラマツの間伐材のほか、廃棄されている柑橘からも精油を生産している。

現在は、事業化に向けた販売モデルを作成し、生産地拡大やイメージ付けに取り組む。最終的にはサブスクを開始し、海外進出も進めたい考えだ。

石村さんは「和おしゃ」をコンセプトに掲げ、SNSを通じた情報発信にも力を入れる。「世界中に和製油のファンをつくり、農林業はもうからないというイメージを変えたい」と語った。

■困難にある子どもたちにもクリスマスを

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「あなたも、だれかのサンタクロースになりませんか」。こう呼び掛けたのは、NPO法人チャリティーサンタ代表理事の清輔夏輝さんだ。

同NPOはサンタクロースに扮したボランティアが、小さな子どもがいる家庭にプレゼントを届ける「サンタ活動」などを展開する。毎年約2000人の大人が、チャリティーサンタの活動に協力しているという。

「『クリスマスなんて来なければいい』と思い詰めてしまうシングルマザーや、『自分が悪い子だからサンタが来なかった』と悲しむ子どもたちがいる。子どもがクリスマスをあきらめなくて良い社会にしていきたい」と、清輔さんは力を込める。

同NPOは子どもたちに本を届けるチャリティプロジェクト「ブックサンタ」も実施する。パートナー書店で子どもたちに贈りたい本を購入し、その場で寄付を申し出ると、全国の子どもたちに「サンタから本が届く」という仕組みだ。2022年には、75813冊の寄付をし、10年後には100万冊の寄贈を目指す。

「一冊の本をきっかけに将来の夢が見つかったという子もいる。本当に届けたいのは、子どもたちを見守っている存在がいるということ。支えられた経験のある子どもは、いつか支える側になる。子どもたちを思ってみんなが手を取り合う社会をつくるために、みなさんにも支える側の大人になってほしい」と呼び掛けた。

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ファイナリスト7人の発表を終えて、渡邉代表理事は「わくわくする、事業性のある意欲的なプレゼンテーションばかりだった」とコメントした。

「SDGs(持続可能な開発目標)が定められたということは、地球には不平等があるということ。貧困や飢餓、教育の格差といった深刻な課題がある。企業には、社会課題を解決しながら、収益を上げて、持続可能なモデルをつくる力がある。夢アワードを通じて、そういったビジネスモデルをこれからも応援していきたい」と語った。

次回「みんなの夢AWARD14」は、2024年に開催される予定だ。


社会との関わりや、人や社会、地球を元気にする取り組みなどを紹介します。