「ワタミオーガニックランド」を6次産業化のモデルに

2021.08.06 社会

小出浩平・ワタミオーガニックランド株式会社代表取締役インタビュー

日本最大級の有機農業テーマパーク「陸前高田ワタミオーガニックランド」が4月29日、岩手県陸前高田市にオープンした。ワタミグループが推進する「循環型6次産業モデル」を具現化する施設と位置付け、東日本大震災発生から10年後に当たる2021年に開業し、今後20年間かけて段階的に施設を拡充することで、被災地復興・地方創生を目指す。ワタミオーガニックランド(株)社長の小出浩平は「『命がつながっている』ことを体感できる場として、たくさんの方に来場して頂きたい」と意気込みを語る。

2021年4月29日にオープンした「陸前高田ワタミオーガニックランド」20年後の完成予想図。約25ヘクタールという広大な敷地に、畑や飲食店などが並ぶ

2021年4月29日にオープンした「陸前高田ワタミオーガニックランド」20年後の完成予想図。約25ヘクタールという広大な敷地に、畑や飲食店などが並ぶ

■津波の被害を受けた住宅地を農地へ

――2019年10月、日本初の有機農業テーマパークとして「ワタミオーガニックランド」の構想を発表されました。新型コロナウイルス感染症拡大など、予想外の出来事もあったと思います。4月にオープンされましたが、いまのお気持ちは。

「ワタミオーガニックランド」ができた陸前高田市今泉北地区は、かつては住宅地だったのですが、2011年3月11日に発生した東日本大震災で甚大な被害を受けました。

復興支援の一環として2016年ころから陸前高田市に通っていました。2018年8月に陸前高田市から今泉北地区の土地の活用について相談を持ち掛けられ、「住宅地を農地に変える」というプロジェクトが始まったのです。

当時、震災から7年が経過していましたが、まだまだがれきが山積みで、鉄道線路は再開しておらず、病院の基礎もむき出しのままで、震災の傷跡がそのまま残っていました。住民向けの説明会を開いても、「こんなところで農業なんてできないよ」といった声もありました。

「本当にできるのだろうか」という状態でしたが、何とかこの4月にオープンすることができました。いまの季節、花畑にはひまわりが咲き乱れています。オーガニックランドでは、野菜の直売も行っているのですが、たくさんの野菜が並んでいます。ようやく大きな一歩が踏み出せたと思います。

ワタミオーガニックランドで咲き乱れるひまわり

ワタミオーガニックランドで咲き乱れるひまわり

■ BBQにカフェ、野菜の収穫体験も

――「ワタミオーガニックランド」では、どのような事業を行っていますか。

約23ヘクタール(東京ドーム5個分)という広大な敷地で、農場、牧場、野外音楽堂、発電施設など、段階的にさまざまな施設を増やしていく計画です。オーガニックの農作物を生産して、それをもとに加工品を作り、販売までを手掛けることで、ワタミグループが推進する「6次産業モデル」を具現化していきます。

4月に開業したのは、面積が3.3ヘクタールの規模で、「モデルエリア」と呼ばれる区画です。「モデルエリア」では、岩手県産の食材を味わえる「手ぶらでBBQおらほハウス」や「MAKOTO YA CAFÉ」といった飲食施設を設けました。農産物の収穫体験も楽しめ、週末になると、仙台市や近隣から200人ほどの方が遊びにきてくれています。

同じモデルエリア内にあるぶどう畑では現在、赤ワインの品種の苗を500本植えています。まだまだ土が痩せている状態なので、糖度を高くするために、苗木は鉢を使った「根域制限栽培」という方法で育てています。3年後に初収穫を迎える予定です。

植樹から約2カ月、蕾がついた樹も

植樹から約2カ月、蕾がついた樹も

ワタミグループが目指しているのは、再生可能エネルギーを活用した「循環型」の「6次産業モデル」です。2021年度中には、ぶどう畑の上にソーラーパネルを設置して、「ソーラーシェアリング」を実施する計画です。発電した電気はオーガニックランド内で使用するほか、余剰分を地域に供給することも視野に入れています。

――2022年には野外音楽堂をオープンするそうですね。

2022年夏ころに日本最大級の自然共生型野外音楽堂として開業予定です。設計は、新国立競技場などを設計した建築家の隈研吾さんにお願いすることになりました。密にならないようにコロナ対策をしながらも、1万3000人を収容できる施設になる予定です。

――地域とのかかわり合いについて教えてください。

「ワタミオーガニックランド」では、「地域内循環」を大切にしています。地元に貢献したいという思いから、施設内で使う食材はすべて岩手県産のものを調達しています。カフェにはピザ窯が2台あるのですが、燃料として地元の間伐材を使っています。

地域との連携という点では、岩手県盛岡市を拠点とするJリーグ所属のプロサッカーチーム「いわてグルージャ盛岡」とも協働しています。

「ワタミオーガニックランド」のテーマの1つに「命の充実」があります。人々が健康でいるためには、食事はもちろんですが、やはり運動も必要です。いわてグルージャ盛岡が開催しているサッカー教室とコラボレーションし、子どもたちはサッカーを習った後に収穫体験を行い、採れた野菜をみんなで食べるといった取り組みもしています。

オーガニックランドが「命のつながりを体験できる場」になり、たくさんの方に来場して頂ければ嬉しいです。

地域の子どもたちとマリーゴールドを定植(左)、オーガニックランドで有機栽培したズッキーニを使ったハンバーガー。牛肉も岩手産にこだわっている

地域の子どもたちとマリーゴールドを定植(左)、オーガニックランドで有機栽培したズッキーニを使ったハンバーガー。牛肉も岩手産にこだわっている


社会との関わりや、人や社会、地球を元気にする取り組みなどを紹介します。