「エネルギーも経済も地域で循環させたい」
2020.11.06 社会
高橋雅彦・ワタミエナジー株式会社代表取締役社長インタビュー
ワタミエナジー(株)は「美しい地球を美しいままに子供たちに残していく」というワタミグループの環境方針のもと、風力・太陽光発電や電力小売り、地域電力支援事業などを展開している。ワタミグループは外食産業として初めて「RE100」(使用電力を100%再生可能エネルギー〈以下、再エネ 〉にすることを目指す国際的なイニシアチブ)に加盟し、ワタミエナジーはその推進役を担う。ワタミエナジー社長の高橋雅彦が今後の展望を語った。
――ワタミエナジーは、ワタミグループの環境事業を担う子会社として1998年に誕生しました。2012年に風力発電事業を始めましたが、改めてワタミエナジーが目指す姿について教えてください。
私たちは単に電力を売るのではなく、「地域を元気にしたい」という思いで事業を展開しています。モデルとなっているのは、ドイツの「シュタットベルケ」という自治体が所有する公益企業です。電気、ガス、水道、交通などの公共インフラを提供し、地域経済循環モデルを構築しています。
ワタミエナジーも「林業」「電力事業」「地域電力支援事業」の3つを展開しているという強みを生かして、「地域のなかで経済を循環させる」ことを目指しています。
■「ワタミの森」の木質資源でバイオマス発電も
――地域電力会社の支援に積極的に取り組んでいますね。
これまで約10社の支援を行いました。当社が地域資源を使った発電事業を行い、地域の事業者がその電力を販売するという地域循環の仕組みです。
大分県臼杵市では、ワタミエナジーが林業事業として臼杵市内にあるワタミの森等から木材(間伐材等)を伐採し、市内の製造業者が木質チップに加工、それを使って木質バイオマス施設で発電します。
ようやく発電所が完成し、2021年から売電を開始する見込みで、2016年に設立した「うすきエネルギー」(大分県臼杵市)が、臼杵の地域への販売を担います。
臼杵市のバイオマス発電施設とうすきエネルギーのオフィスは、廃校になった校舎やグラウンドを有効活用しました。展示スペースも設けているので、地域の方にワタミエナジーの取り組みを知ってもらうきっかけになればと考えています。
また、この4月には電気料金の1%を再エネ発電施設に投資する取り組みを開始しました。「ワタミの電気」を使えば使うほど、環境負荷が小さい再エネの普及に貢献できる仕組みです。気候変動問題が深刻化するなかで、世界では再エネの拡大に貢献する「追加性(Additionality)」が重視されていることから、再エネへの投資を決めました。
ワタミエナジーは電気を「社会課題解決のツール」にしていきたいのです。
■電気代で地域のクラブ活動を支援
――この10月に開始した「学校応援電力」もその一環でしょうか。
そうですね。「学校応援電力」は、電気料金の一部が札幌山の手高校のクラブ活動への寄付につながるプランです。札幌山の手高校は、ラグビーワールドカップ2019日本大会で日本代表の主将を務めたリーチ・マイケル選手の母校として知られています。
同校の卒業生や地域の方々が、「学校応援電力」に切り替えることで学校のクラブ活動を応援できるようになります。まだ札幌産の電気として供給はできていないのですが、電気代を地域に還元するという一つのモデルになればと思います。
――消費者の電気の選び方は変わってきましたか。
電気の価値はなかなか目に見えにくく、どうしても価格勝負に陥りがちです。ですから、再エネの価値や「電気を選ぶ」ということの意義をしっかりと伝える努力を続けていきます。
せっかく支払う電気代がどこに行くのか、自分は何を応援したいのか――。電気を通じて考える機会を提供していけたらと思います。
最近では、東京産の野菜や肉・酒などを楽しめる飲食店やシェアキッチンを運営するコミュニティハブ「東京農村」(東京・港)が入居するビルで、当社の「再エネ100プラン」を採用して頂きました。当社の理念に共感して頂いたようです。
社外に広めていくことも重要ですが、ワタミグループは「RE100」に加盟し、2040年までに事業活動で消費する電力の100%を再エネにすることを目指していますので、今後は本社ビルや工場、外食店舗といったグループ内での再エネへの切り替えにも力を入れていきます。