ワタミ外食店舗で木製カトラリーを順次導入
2022.03.24 自然
ワタミは3月から、プラスチック資源循環促進法の施行に合わせ、「から揚げの天才」「bb.q オリーブチキンカフェ」「TGIフライデーズ」で提供するカトラリー(スプーン、フォーク、ナイフ)をプラスチック製から木製に順次切り替える。これにより、年間4トンの使い捨てプラスチック削減につながる。調達を担当したワタミ株式会社仕入開発部の天笠翔太は「業務を通じてSDGsに貢献していきたい」と語る。
――「プラスチック資源循環促進法」が4月から施行され、対象の使い捨てのプラスチック製品(※)を提供する事業者は、削減対策を求められます。新法をどのように受け止めていますか。
ワタミは、「ワタミサスティナブル方針」を掲げ、地球環境に配慮したさまざまな取り組みを推進しています。もともと、使い捨てプラスチックを削減しなければいけないと考えていましたが、新法の成立は「アクセル」になりました。1年ほど前から具体的に素材の検討を始めました。
※ 消費者に無償で提供される使い捨てプラスチック使用製品(特定プラ製品)について、提供する事業者は、排出を抑制しなければならない。対象になるのは、スプーン、フォーク、ナイフ、マドラー、ストロー、ヘアブラシ、クシ、カミソリ、シャワー用キャップ、歯ブラシ、ハンガー、衣類用カバーの12品目
――「無料では提供しない」、あるいはほかの素材の選択肢があるなかで、なぜ木製カトラリーにしたのでしょうか。
テイクアウトやデリバリーで使用するカトラリーですので、「すぐに食べたい」というお客様が多く、配布しないという選択肢はありませんでした。ですから、提供する前提で素材の検討を始めました。
10社以上からたくさんのご提案をいただきました。どの製品が、利用するお客様にストレスをかけずに、採算性も合うのか、検証を重ねてました。
さまざまな素材を検討していくなかで、「紙製」「PLA(ポリ乳酸)」「木製」の3つに絞られました。実際に使ってみて、口当たりや口の中に入ったときの違和感がないかを確認したり、耐久性を調べたりしました。
紙製は液状のものがすくいにくく、耐久力に課題があり、木製カトラリーを採用することにしました。
――ワタミグループは「2030年までにプラスチック使用量50%削減」という目標を掲げています。今回の切り替えによるインパクトについて教えてください。
木製カトラリーの切り替えによって、プラスチック使用量を4トン削減できます。これは、ワタミ外食店舗で使用する包材系の消耗品のうち、約5%にあたります。CO2に換算すると、年間5960キロの削減が期待できます。
ワタミグループはこれまでも、プラスチックの削減に取り組んできました。2020年7月にレジ袋有料化がスタートしましたが、そのタイミングでレジ袋はバイオマス25%配合のものに切り替えました。外食店舗の持ち帰り用容器には、PLAを採用しています。
食事宅配サービスを行う「ワタミの宅食」で使用する弁当容器に関しては、軽量化や薄肉化のほか、弁当容器を回収して新たな容器にリサイクルする取り組みを2021年3月から全国で展開しています。
――この数年で、気候変動や海洋プラスチックごみ問題に対する意識が高まっていますが、お客様の意識の変化を感じますか。
「ワタミの宅食」では、容器回収リサイクルを行っていますが、毎月、回収率が上がっています。背景には、お客様だけではなく、食事を届ける「まごころスタッフ」の意識の変化もあると思います。
今回木製カトラリーを導入しましたが、ワタミの外食店舗を利用してもらうことで、プラスチック以外の素材に触れる機会を提供し、環境を意識するきっかけづくりに貢献したいと考えています。
――ワタミグループは「SDGs日本一」を掲げています。仕入開発担当として、どのようにSDGsに取り組んでいますか。
ワタミグループは2019年4月にSDGs推進本部を立ち上げ、部門横断型のタスクフォースチームを結成しました。私も実行部隊の一員として、活動しています。
私は仕入開発部で、外食店舗や工場、宅食事業で使用する備品や消耗品の調達を担当しています。
今回のプラ新法施行に伴い、そもそもプラスチックとは何か、どのような影響を与えるのか、代替素材にはどのようなものがあるのか、基本的なところから学んでいきました。情報を仕入れることの重要性を実感しています。
容器や消耗品の軽量化や削減に取り組むことは、プラ使用量の削減につながるうえに、コストダウンにもつながります。まさにSDGsは業務に直結する内容ですから、面白さを感じています。
一方で、環境に配慮した素材に切り替えると、コストが上がってしまう場合もあります。コストを抑えるには、今後は他社との協働も重要になってくるはずです。例えば、ごみ袋やレジ袋といった消耗品は、外食店舗だけではなく、スーパーなどでも多量に使われています。
今後は、他社と連携して、環境負荷の低い商品開発や、スケールメリットを生かした価格を抑える仕組みなどもつくれたらと考えています。