脱炭素社会へ ワタミが本社ビルと食品工場を再エネに切り替え
2021.10.14 社会
ワタミ株式会社は10月1日、本社ビル(東京都大田区)、食品工場「ワタミ手づくり厨房 中京センター」(愛知県津島市)で使用する電力を再生可能エネルギーに切り替えた。ワタミは2018年3月、国内の外食産業として初めて使用電力の100%再エネ化を目指す国際イニシアチブ「RE100」に加盟し、2040年までの達成を目指す。その一環として、本社ビルで使用する電力は、ワタミが秋田県に所有する風車で発電したFIT電気を利用する。
中京センターで使用する電力は、岐阜県の小水力発電所や自社グループの食品工場に設置したソーラーパネルなどで発電したFIT電気を使う。それぞれ非化石証書と紐付け、環境価値が付いた再エネとして、グループ会社のワタミエナジーから購入する。残る4つの食品工場は2026年9月までに再エネに切り替える予定だ。
外食店舗としては「三代目鳥メロ」笹塚店、「bb.qオリーブチキンカフェ」大鳥居店で再エネを導入している。
■「焼け石に水」でも歩みを止めない
「必達目標である『再エネ100%』を達成するために、『RE100タスクフォース』を立ち上げ、各事業部から集まったメンバーで議論や検討を重ねてきました。コロナ禍で厳しい事業環境にありましたが、RE100達成に向けて大きな一歩を踏み出せて良かった」
こう語るのは、ワタミグループ内で再エネの推進役を担ってきたワタミエナジー株式会社電力事業ユニットの山﨑輝だ。
ワタミは2019年10月、SDGs推進本部を立ち上げ、本業のなかでSDGsに取り組むために、各事業本部から選出したメンバーによる「社内組織横断タスクフォース」を組織した。その一つが「RE100タスクフォース」だ。2040年までにすべての事業所で再エネ100%にすることを目指している。
「ワタミグループは、環境(エコロジー)と経済(エコノミー)の両立(W-ECO)を目指しています。再エネへの切り替えは、コスト増になってしまうため、外食店舗や宅食の事業所の負担をどう減らせるかが課題でした。LED器具の導入など、省エネ活動や生産合理化とセットで提案することで、再エネ導入が具体化していきました」(山崎)
ワタミグループ全体の再エネ比率は2021年10月時点で2.6%。2022年度までに5.6%、2035年までに50%に高める計画だ。
「ワタミグループの年間電力消費量は約5000万kWh。日本全体の年間消費電力量1兆kWhから見るとごくわずか。それでも、一人ひとり、一店舗一店舗の意識や行動が変わることで、社会が変わっていくはずです。『焼け石に水』かもしれませんが、水をかけ続けたら何かが変わるかもしれない」(山崎)
ワタミエナジー代表取締役社長の高橋雅彦は「目標達成までのロードマップを描いていても、うまくいかず挫折しかけたこともありました。幸い、RE100タスクフォースには経営管理のメンバーや各事業部の責任者もいるので、RE100達成に向けて、建設的な議論ができました。ワタミエナジーとしては、ワタミグループが必要な電力を不足なく調達するだけにとどまらず、気候変動を抑制していくために、再エネ施設への投資や地域電力とのつながり強化など、さまざまな施策を講じていきたい」と展望を語った。