11農場で有機認証を、8農場でJGAP認証を取得、ワタミファームが描く未来

2019.12.11 農

西岡亨祐・ワタミファーム代表取締役社長インタビュー

2002年にワタミファームを立ち上げて以来、ワタミは有機農業に積極的に取り組んできた。全国11カ所の農場・牧場で有機JAS認証を取得したほか、8つの農場でJGAP認証を取得している。20213月には日本初のオーガニックテーマパーク「ワタミオーガニックランド」を岩手県陸前高田市に開設する予定だ。ワタミファームが目指す未来を西岡亨祐・ワタミファーム代表取締役社長に聞いた。

西岡亨祐・ワタミファーム代表取締役社長

西岡亨祐・ワタミファーム代表取締役社長

――そもそもなぜワタミが有機農業に取り組むことになったのでしょうか。外食チェーンが自社農場、それも有機農場を所有するのは珍しいですね。

ワタミは居酒屋チェーン「つぼ八」のフランチャイズとしてスタートしました。創業当時、「生絞りレモンサワー」が人気だったのですが、レモンの皮には農薬や防腐剤が不着しているため「よく洗うように」というマニュアルがあったのです。

無農薬のレモンを使いたかったのですが、手に入りにくく、安全・安心な食材を店に出したいという想いから、有機農業のワタミファームを立ち上げることになりました。

私たちワタミファームは、「有機農業を発展させ、循環型社会を創造し、人々の幸せに貢献する」という思いを実現させたいのです。

土壌が持っている本来のチカラを引き出した滋養にあふれた野菜づくり、環境への負荷が少ない土づくり、ストレスのかからない飼育方法での養鶏(平飼い)・酪農、これが私たちが取り組んでいる農業です。

――西岡さんがワタミファームに来た経緯は。

実は「カウボーイ」にあこがれがあり、2007年にFA(フリーエージェント)制度を使って外食からワタミファームに異動しました。いまは酪農だけですが、当時は弟子屈牧場(北海道)で肉牛を育てていたのです。放牧で育て、牛本来のおいしさが味わえる赤身肉が特徴でした。

放牧の場合、飼料になる牧草がとても大事ですから、山武農場(千葉県)で草づくりから勉強しました。

■鍋の白菜は100%有機に

――ワタミファームの有機野菜はどの程度、ワタミの外食店舗に活かされていますか。

野菜では約3割が有機・特別栽培農産物で、そのうちの20%がワタミファームの野菜です。 冬は鍋物の季節ですが、11―12月は倉渕農場(群馬県)で白菜を作っているので、この期間は有機野菜の比率は高まります。 冬場は(ほぼ100%)倉渕農場からオーガニックの白菜を提供しています。

11月からはワタミファームや契約農家などで採れた有機野菜や卵、生乳などオーガニック原料を使用したメニューに独自の「ワタミオーガニックマーク」を付ける取り組みを開始しました。今後は「和民」と「ミライザカ」を中心に、オーガニックの導入を広げていきます。

――ワタミファームの畑作農場はすべて有機JAS認証を取得し、2019年9月には美幌峠牧場(北海道網走郡美幌町)でも飼料生産(牧草栽培)で有機JAS認証を取得したそうですね。同時にJGAPの取得も進めています。その意義は。

若いスタッフにどうやって農業技術を伝えていくかが課題でした。

JGAP認証は、農場経営の工程管理手法で、食品の安全性、労働安全、環境保全などの条件を満たしている必要があります。このJGAPを年に1回、自分たちで自己点検して、悪いところは直していくというPDCAのサイクルを導入しています。

これによって、農場経験が2―3年といった社員でも、JGAPの項目を一つずつクリアしていくことで、農場全体の点検ができます。ですから、農場管理の教育用としてJGAP認証を、有機農法を身に着けるために有機JAS認証を活用しています。

写真=美幌峠牧場では乳牛300頭が放牧飼育されている。9月には牧草栽培で有機JAS認証を取得した

美幌峠牧場では乳牛300頭が放牧飼育されている。9月には牧草栽培で有機JAS認証を取得した

■「命の循環」伝える施設を

――2019年10月には「ワタミオーガニックランド」を発表しましたね。

2021年3月の開業を目指しています。開業から段階的に施設を拡充して、最終的には約23ヘクタールの敷地を持つ施設になる予定です。敷地内には農場、牧場、養鶏場、工房、ショップやレストラン、発電施設、宿泊施設の建設を予定しています。

ワタミオーガニックランドに来ると「命の循環」が分かるような施設にする予定です。養鶏で出た鶏糞で堆肥作りをして、その堆肥を入れて土づくり行い、トマトや葉物、根菜類をつくります。また、乳牛を放牧して、その生乳を使った乳製品をレストランで提供したいと思っています。

写真=ワタミファームの西岡社長は有機農業の奥深さを語る

ワタミファームの西岡社長は有機農業の奥深さを語る

―今後の展望について教えてください。

JGAPを進めて、人材を育てることと、農場を広げることです。11月以降の寒い季節にも対応できるように、静岡や愛知など東海地域で農場を広げることを視野に入れています。また、放牧酪農も拡大したいのですが、その管理を任せられる人材を養成するのに5年は必要です。そこに向けて、どうやって人を配置していくかが課題です。

天候にも左右されますし、有機農業では病気や害虫といった悩みが常にあります。品質が良く、強い野菜をつくるには、土づくりが大切です。

本当によりよい土ができたときは栄養価も高く、農作物もきれいに実り、それを美味しそうにお客様が食べている姿を想像すると幸せな気持ちになります。その姿を想像しながら社員一同、土に向き合って農業に取り組んでいきます。


社会との関わりや、人や社会、地球を元気にする取り組みなどを紹介します。