「閖上の記憶」を次の世代へ、学生団体が東北支援イベント
2018.01.05 社会
東北支援学生団体JoyStudyは11月25日、「JoyCharity vol.15 東北もぐもぐ祭~やっぱり東北(ここ)が好き~」をITALIAN RESTAURANT&BAR「GOHAN」新宿三丁目店で開催した。「東北の今と魅力を伝える」をテーマに掲げ、学生ら約150人が参加。語り部プログラム「閖上(ゆりあげ)の記憶」が行われたほか、福島産の食材を使った料理が提供され、東北に思いをはせる1日になった。
オープニングアクトとして、明治大学の学生による津軽三味線ライブが始まると、会場はすぐに熱気に包まれた。続いて司会のお笑い芸人・ガレットが登場し、会場を盛り上げる。
その後、牛乳パックを使った灯篭づくりが行われ、参加者は東北に思いをはせながら、メッセージを書き込んだ。ここで作られた灯篭は、岩手県盛岡市で開かれる「祈りの灯火」に送られ、全国から集まった灯篭とともに灯りがともされる。
■福島産の無農薬野菜がサラダに
「福島産のお野菜を使ったサラダです。ドレッシングにも会津産のえごまを使っています。どうぞおいしく食べて下さい」
JoyStudyのメンバーが呼びかけると、たちまち人だかりができる。この日は特別に、福島県の二本松農園などで栽培されたキュウリ、ダイコン、ニンジンのバーニャカウダ、福島県伊達市産のヒラタケを使ったペンネボロネーゼが提供された。
バーニャカウダとペンネボロネーゼは「GOHAN」の通常メニューだが、食材はJoyStudyがボランティア活動を行う福島の農園から特別に取り寄せた。
「GOHAN」新宿三丁目店の小野基店長は、「9月頃に学生さんから相談をもらって、すぐに協力したいと思った」と話す。通常とは違った仕入れを行うことに課題はあったが、趣旨に共感したワタミの商品開発部などから協力を得てイベント限定で実現した。
小野店長は「福島から泥のついた野菜が届き、その新鮮さが嬉しかった。小・中学生だったころに震災を経験した若い学生が東北のために頑張っている。彼らの思いに応えられて良かった」と喜んだ。
■「震災を自分事にしてほしい」
「もし息子が生きていたら、皆さんと同じ大学生になっていたかもしれない。生きていたらちょうど20歳。なぜ息子を助けられなかったのか、ずっと後悔している」
そう語るのは、「閖上の記憶」を伝える認定NPO法人地球のステージ(宮城県名取市)の語り部・丹野祐子さんだ。丹野さんは東日本大震災の被害が大きかった閖上にあった閖上中学校で、当時中学2年生だった息子を亡くした。同中学校では震災で14人の生徒が亡くなったという。
「『私は大丈夫』と決して思わないでほしい。震災はいつどこで起きるか分からない。もし何かあったら、どう生き延びるのか。想像力を働かせ、自分の命を守ってほしい」。丹野さんの訴えに、参加者は涙ぐみながら聞き入る。
このイベントを主催したJoyStudyは震災後、関東にいる自分たちに何かできることはないかと考え、2011年7月に設立された。現在も関東の大学生約60人が活動し、二本松農園や閖上地区など、各地でボランティア活動を続けている。
JoyStudy 7代目代表の加藤涼さんは、「フットワークが軽く、現地に足を運ぶなど、学生だからこそできることがあるはず。今回のイベントをもって7代目代表を卒業するが、JoyStudyはこれからも東北に寄り添っていく」と語った。