働く意欲に応えたい、ワタミの障がい者雇用

2017.01.13 社会

障がいを持つ労働者の実数は約36万人に上り、年々増加傾向にある。一方で、法定雇用率を達成した企業の割合は、47.2%と半数に満たない(平成28年版「障害者白書」)。こうしたなか、障がい者雇用に力を入れるワタミグループは、雇用率を上げるだけではなく、密なコミュニケーションを取りながら、働きがいを感じてもらうことを目指す。

普段は別々の店舗で働くスタッフが一堂に会す。店舗の違いや仕事について楽しそうに会話する

普段は別々の店舗で働くスタッフが一堂に会す。店舗の違いや仕事について楽しそうに会話する

「清掃だけでなく、仕込みの仕事もできるようになり、楽しくなってきた。2017年は『焼き物の担当』にも挑戦したい」

「1日に5時間半働けるようになり、30分間のばすことができてうれしかった。体調管理に気を付けて、2017年は1日6時間を目指したい」

2016年12月7日、「和民」西新宿プラザ通り店で開催された慰労会で、ワタミの従業員は2016年の反省と2017年の抱負を発表した。その後、勤務先の店長から「サンクスカード」が贈られた。

忘年会の参加者は都内で働く22人。いずれも障がい者雇用で働いている。主な仕事は、開店前の清掃や食器洗いのほか、仕込みや簡単な調理も含まれる。

ワタミグループは法定雇用率を上回る3.96%(在籍者数244人)を達成。障がい者雇用を担当し、働きがいのある職場づくりに取り組むのが、ワタミ株式会社人事部の吉田良二だ。自身も視覚障がいがある。

■決め手は「働きたい」気持ちがあるか

ワタミ(株)の吉田から手渡されたメッセージカード

ワタミ(株)の吉田から手渡されたメッセージカード

「障がいの特性や職場・職種とのマッチングの前に、まずは働きたいという気持ちを大事にしたい。そうした意欲には最大限応えたい」。吉田は採用について語る。

「三代目 鳥メロ」仙川店の藤縄菜穂子さんは、3年ほど仕事が見つからなかったという。もともと栄養士として働いていたが、体調を崩し退職した。「やっぱり仕事は大変だけど、働くのは楽しい。自分の居場所ができた。できることをもっと増やしていきたい」。意欲的に語る表情は明るい。

障がい者雇用では、職場定着が課題になりやすい。そこで、吉田ははじめに障がいの特性についてヒアリングし、採用後も電話や携帯電話のショートメールなどで日々やり取りする。定期的な懇親会も欠かさない。

■勤続年数や勤務時間を表彰

ワタミ株式会社人事部の吉田良二

ワタミ(株)人事部の吉田良二

勤続年数や安定した勤務状況をきちんと評価し、表彰することも工夫の一つだ。忘年会では、勤続年数1年が3人、3年が1人、6年が1人、表彰された。

続けて、月間85時間連続勤務という目標をどのくらいの期間、連続で達成できたかを表彰した。これは、ほぼ無遅刻・無欠勤であることを示す。3カ月が4人、6カ月が3人、12カ月が2人、24カ月が3人いた。

「意欲がある分、はじめは無理をしやすい。まずは短めに働いてもらい、慣れてきたら徐々に勤務時間を増やす。その人が体力的に無理のない範囲で精一杯できることをしてくれれば良い。障がいによってできないことは、まわりがサポートしていく」。こう語る吉田の言葉は力強い。


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