【北海道で学ぶ2週間】農業インターンシップで、若者の意識が変わる!
2014.11.30 農
大学生がインターンシップに参加する目的は、なんでしょうか?
- もっと成長したい -
- 学生のうちに様々な経験を積みたい -
そんな”自分を変えたい”と思う若者たちに、成長のきっかけを与えてくれるインターンシップとしてお勧めしたいのが、ワタミグループの運営する「農業インターンシップ」です。
実はこの事業は一度頓挫していて、去年に再スタートしたばかりなんです。
今回は、ある一人の男性の熱い思いによって復活を遂げた”農業インターンシップ”が実際に行われている北海道帯広市を訪れて、参加した学生や事業復活の鍵となった人物へのインタビューを行いました。
■そもそも農業インターンシップって何?!
農業インターンシップでは、農家の方の為に本気で働くことを通して
「働くこと」の意義を考えます。また2週間の合宿という集団生活を通して、チームビルディングを学びます。今年は北海道の当麻町と帯広市で行われ、約50名の学生たちが参加しました。
上記図のように、自己成長の機会を求めていたり「農業を体験してみたい」という参加者と、忙しい収穫期の人手を探している農家の方、そして農業を通して若者に「働くこと」を考えるキッカケを提供したいワタミグループ、この3主体で、この農業インターンシップが成り立っています。
左の写真は、収穫用農業機械のハーベスターに乗ってジャガイモの選別作業を手伝っている様子です。取材した私も実際に手伝わせていただきましたが、ずっと立ちっぱなしの上に素早い作業が要求される大変なお仕事です。コンベアーから巻き上がる土埃で、作業が終わった頃には顔や鼻の中までが真っ黒になります。
このインターンシップが行われる8月~9月は、農家の方が最も忙しい時期。家族の生活のために必死で働いている人たちとともに過ごすことは、参加者にとっても大きな刺激になります。受け入れ農家の方の中には、繁忙期の貴重な人手としてインターンシップに期待を寄せる方も居れば、「自分の息子や娘のような人に来てもらいたい」と、家族の一員として若者との出会いを求める方もいらっしゃいます。
普段の生活では体験することのできない農業との出会いや、まるで家族のように接してくれる農家の方の温かさ、そして多くの仲間たちと出会うことが、この農業インターンシップの魅力です。
■2週間の合宿で、共同生活を学ぶ!
2週間の共同生活、食事はもちろん自分たちでつくります。朝食の当番になった場合は、他の人がまだ眠っている中、朝5時には起床し準備を始めます。全員分の食事を用意するだけでなく、仲間がお昼に食べる弁当もつくります。また食事当番の他には、掃除や洗濯をする係などの役割分担を行っていました。生活に関するルールや役割分担はすべてインターン生が自分たちで決めて実行に移すので、最初は話し合いがもつれることも多かったそう。今回のインターン生たちは、最初に決めた班ごとにローテーションを組んで、様々な役割をこなしています。
農家さんのもとで働くことで、食事に対する考え方が改まり、食べ物の大切さを実感することができます。「いただきます。という言葉に思いがこもってくる」と話す学生もいました。
夕食後は、全員でミーティングを行います。ミーティングでは、農作業の反省や生活面での反省を行っていました。班ごとに分かれて、自分が今日の活動で感じたことや考えたことを共有します。また、一人が話した内容に対して、他の班員が「もっとこうするべきではないか」とフィードバックをする形式を取り、話し合いの質を高めます。
活動の共有だけではなく、自分たちが生活する中で改善しなければならない点を出し合って、新しいルールづくりを行うこともあります。例えば朝起きる時間や、就寝する時間の決まりをつくったり。この日は、カラスに生ごみを荒らされないためにはどう工夫するべきかが議題に挙げられました。
ミーティングは、最初の頃は意見の食い違いが多かったり、無理に納得しようとしてフラストレーションが溜まったり、時には学生同士がぶつかり合うこともあったそう。そんな共同生活を通じて”本音でぶつかり合える関係”をつくり、自分から発信していく力や考える力を養うことが、この農業インターンの醍醐味でもあります。
この日のミーティングでは「農家さんから、農業インターンシップに対する思いを聞いて感動した」と涙ながらに話し、全員へ自分の感じた思いを伝えようとする学生がいました。
■参加学生にインタビューをしました!
『仕事をするって、簡単なことじゃなかったんです』
関西外国語大学4年生の新井実穂(あらい みほ)さんは「”出荷できてなんぼ”という現場で働く、農家さんのもとで活動したことで、農業は1人で黙々とこなす作業ではなく、家族でのチームワークが大切な仕事だと感じました。私は今まで大学生活を奨学金とアルバイトで賄ってきたので、アルバイトをしている分、少しは社会のことを知れているのではないかと思っていました。ですがこのインターンを経験してみて、農家の方の仕事に対する思いと、自分の思いの大きさの違いを肌で感じて、まだ自分は仕事や社会のことを何もわかっていなかったんだと実感しました」と、活動を通して学んだことを語ります。
そんな新井さんがある日、農家の方に、自分から何かしてあげられることはないかと聞いたところ『毎日元気に出勤してくれれば、それでいい』と返してくれたそう。
「作業中は、ここがダメという指摘も受けないので、仕事に対する姿勢は自分から勉強するようにしています。作業に慣れてきたら無意識にぼーっとできる時間も増えますが、私は手が空いたら、そこが反省点だと考えるようにしています。また、このインターン中に一番考えたことは”人のために動くこと”です。いままでは自分の成長のために動くことが多かったのですが、自分のためだけに動くと自己満足で終わってしまうことに気が付きました。いままでとは意識を変えて、受け入れ農家の方や他のインターン生など、皆のためになる行動をしていきたいです」
『冬にもう一度来て、農家の方に会いたい』
明治学院大学4年生の三枝航(さえぐさ わたる)さんは「最初は農作業も辛かったのですが、いまでは少しずつ慣れてきました。僕自身、農業の手伝いをとても楽しく感じています」と、インターン活動の面白みについて話してくれました。その一方で、活動中に一番大変だったことは「共同生活」だと話し「みんな初対面だということもあって、全員で生活のルールを決めるのに時間がかかりました」と合宿を振り返ります。
三枝さんは、自分がインターン活動中に何をしたいのかが明確にならず悩んでいて「今のままでは受け入れ農家の方へ恩返しをすることもできないので、まずはもっと農家の方たちと仲良くなって、冬にもう一度帯広まで会いに来ようと考えています」と話してくれました。
■一度途切れた事業を、熱い思いで復活させた山内一成さん
ワタミ株式会社の人材・ブランド本部に勤めている山内一成(やまうち かずなり)さんは、2013年に日本武道館で開催された、日本一の夢の祭典「みんなの夢AWARD3」に出場し
”働く意義と夢を育み、若者・企業・日本を変える”ことをテーマに自身の夢をプレゼンしました。
みんなの夢AWARDには、主催者でありワタミ創業者の渡邉美樹氏や、現社長の桑原豊氏が審査員として参加されています。自身の夢を実現するために”独立起業を決意”し、プレゼンの際には、大観衆の前で”辞表の発表”までをもした山内さんの思いがトップの経営陣に届いた結果として、今年で14回目の開催となる農業インターンシップが1年ぶりに復活することになりました。
「会社を辞める覚悟で「みんなの夢AWARD」に出場し、辞表を発表しましたが『まずは社内ベンチャーとしてワタミを活用しながら事業を育ててみてはどうか』という桑原社長の提案もあって、現在に至ります。この農業インターンシップは、参加してくれる人の変化や成長を感じられることに運営側として魅力を感じています。参加する前の学生たちは感覚的に言うと、まだくすぶっている感じがしていたり表情も冴えなかったりするのですが、いざこのプログラムを体験すると徐々に感性が目覚めていき、表情も豊かになって、学生が主体的になる様子が伝わってきます。感度が高い人だと初日から変化が現れて『農家さんの思いにふれて感激しました!』と泣いて帰ってきたり『農家さんの息子・娘になって頑張ります!』と話してくれることもあります」
自身が学生の時にインターン生だった頃には、北海道の農家の方にまるで家族の一員のような形で受け入れてもらったことから”家族の温かみや、人の温かさにカルチャーショックを受けてしまった”と話す山内さんは、農家の方たちの思いに応えたいという一心でこの事業に取り組んでいます。また農業インターンシップが ”人として成長できるプログラム” であることから、一人でも多くの若者に体験してもらいたいとのこと。
「私の夢は、みんなの夢AWARDでも発表したのですが、農業インターンシップを2022年に100の地域で開催し、1万人が参加するものにすることです。北海道に限らず、冬は沖縄でやるだとか。農業だけに限らず、例えば林業、水産業、伝統工業など、自分の仕事にこだわりを持っている人たちと働くことで応用は利くと考えています」と今後の展望を熱く語ってくださいました。
このように農業インターンシップは、農業、農家の方、仲間との出会いの他に、若者が就職活動前に「働く」ことを考える機会を持つことで ”働くって、自分の思いを重ねながらだと楽しくて、やりがいがあるんだ” という新たな知見を得ることができるプログラムです。
山内さんは「働いて得られるお金などの報酬部分を見ることも大事ですが、それだけではなくて”自分のやりたいことをどうやったら仕事に結び付けられるのか”と考えるようになると自分のスタンスが変わってきます。働くことに対して前向きに考えてもらい、様々な経験を経て、実の就職活動に入ってもらいたいです」と若者への思いをつづります。
就職活動を意識する大学3、4年生に限らず、農業インターンシップは ”自分を成長させたい” と願う人たちに、広くお勧めできるインターンシップです。
もし、自分の大学生活をまだ ”物足りない” と感じているならば、この農業インターンシップを通じて、多くの仲間との出会いが待つ北海道の大地を訪れてみてはいかがでしょうか?
HP:http://nougyou-intern.com/ 北海道農業インターンシップ
(ライター:インタビュー団体Lien 吉田渉)